歯性上顎洞炎の症例

上あご奥歯

50代 女性

右上の奥歯に痛みが有ったので、近所の歯科医院で抜髄治療を受けました。しかし、その後延々と数か月、通っているが一向に終わる気配が無いことと、痛みまで出てきたために来院されました。

状態と治療

歯科用CTを撮影すると、上顎洞内の粘膜は肥厚していました。又、口蓋根の根尖部の骨の吸収も見られました。

ケースルクト法により治療。3回来院。5か月後にCTで観察したところ、上顎洞粘膜の肥厚はほぼ消失し、症状も全く無くなっていました。

考察

典型的な歯性上顎洞炎です。この上顎の奥歯の直上には上顎洞と言う副鼻腔の一つの空洞が有ります。歯の根の先にある根尖孔とこの上顎洞が近接している場合、神経(歯髄)が生きていれば、何の悪さもしません。しかし、神経が虫歯等で死んでしまうと、歯の中に大量の細菌が増殖します。それが、根尖孔を通って、上顎洞内に達する事により上顎洞に炎症を起こします。歯性とあるのは、歯が原因と言う意味ですが、歯が原因ではない場合は、この歯性が付かない、ただの上顎洞炎になります。いわゆる蓄膿症です。

歯性上顎洞炎の特徴は、絶対に原因の歯が有り、上記のレントゲンの様に、歯を中心に上顎洞内に曇りが見えます。つまり歯科用CTを撮影しないとほぼ分かりません。

歯性上顎洞炎は根管治療で治る場合が多いです。しかし、根尖孔の充填が不完全な側方加圧根充法では治癒率は下がると考えています。ケースルクト法は根尖孔の閉鎖は格段に良いので、この症例の様に治癒するのです。

尚、根管内のお薬を交換しているだけでは、ほぼ治りません。又、歯性上顎洞炎と分かっても、歯の中の土台が外せない様な構造になっている場合は抜歯を検討しなければならない場合も有ります。

日本口腔外科学会による歯性上顎洞炎の説明はこちら

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