根尖病変(病巣) こんせんびょうへん こんせんびょうそう
レントゲンを撮って、根の先に黒い陰が見えると、根尖病変や根尖病巣と言われます。それには2種類あると、歯学部で習います。歯根肉芽腫と歯根嚢胞があると。
それではどこが違うのか?
歯根の先にあるモノが肉芽腫はミートボール。嚢胞はタピオカかイクラか。つまり肉芽腫はブヨブヨなお肉のかたまり。嚢胞は汁が入った肉袋の様なものです。
しかし、2つの鑑別は最終的に抜歯や外科処置をしてからその部分を切り取って病理組織検査をしないと、確定できないのです。つまりレントゲンでは何となくしか鑑別ができないのです。
病理学的には、歯根肉芽腫の状態から、マラッセの上皮遺残が陥入して3層の嚢胞構造を形成すると歯根嚢胞になると説明されています。だから、歯根肉芽腫は根管治療で治りますが、一般的にはこの嚢胞壁を持っている歯根嚢胞は根管治療では治らない場合が多いと習います。
病理学的な説明はこちら
上記が定説です。
外科処置をしないでも歯根嚢胞は治る場合も多い
しかし、臨床的には意味が有りません。私たちはどっちらでも根管治療で治ると考えています。しかしエビデンスが有るのかと言われると、確たる証拠は無いと言わざるを得ないのです。
それはなぜでしょうか? それは調べようと思うと、根管治療を始める前に、のう胞が存在していると思われる部分を切開して、その一部の組織を採集し、それを顕微鏡で病理学的な検査をしておく必要があるからです。この様な事は、倫理的に出来ないですし、出来たとしても外科的にメスを入れる刺激で治った可能性もあると考えられるからです。つまり非外科処置ですので病理標本にする切片を取れないだけなのです。
小机歯科医院での11年間の根管治療の予後がわかるレントゲンをほぼ全て見た結果では、しっかり根充が出来ている感染根管処置の167症例では、94%が改善しています。
(参考:感染根管治療)
それでは、歯根肉芽腫と歯根嚢胞はどれだけの割合で存在するものなのか?これも病理検査をしないと、白黒は付かないです。日大松戸で放射線学的に調べた論文が3報あるので、それを見ると、病理学的に確定診断が付いているレントゲン像に対しての研究がされています。それでは歯根嚢胞が2で有るのに対して、歯根肉芽腫が1程度の割合で研究されています。では存在比も歯根嚢胞が歯根肉芽腫の2倍あると考えるのは短絡的です。
それは、歯科大学の病院まで紹介されて来るのは歯根嚢胞の様な明確なレントゲン透過像をみとめらているモノが多いと考えられるからです。つまり、割合は分からないでしょう。
ただ、敬友会のレントゲンを見ると、明らかに臨床診断で歯根嚢胞とされるケースも根管治療だけで治っている事を考えると、結論としては、歯根嚢胞は根管治療で治ると言えるのです。外科的にのう胞を取り、更に歯の根の一部を削る歯根端切除術や、抜歯は必要無い場合もかなりあります。
(参考:症例歯根嚢胞)
つまり、ケースルクト法による根管治療では、痛い思いをしなくても治る場合も多いのです。しかも歯も抜かずに残せるのです。これは言い過ぎかもしれませんが、もしも日本の全ての根管治療方法をケースルクト法に切り替えたとしたら、インプラントの症例は激減すると思います。ただし、健康保険の根管治療の診療報酬は世界の最貧国のそれ以下ですので、この方法に切り替える事は無理でしょう。